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2023/06/11[院長コラム]梅雨の季節に

こんにちは

六月に入りはや二週間目になり、本日関東地方も梅雨入りだそうです。特別に忙しいと言うわけではなかったのですが5月はコラムを書く機会を逸しまい、どうもすいません。また、この六月も前回からの予告からすると「労働」について書く予定だったのですが、文献渉猟がかなわなく今回書くことができませんでした。再びごめんなさい。

 

 

 

さてこのままだと六月もコラムを書かずに終わってしまいそうなので、今こうして無理やりPCの前に座りキーボードを叩いています。・・・・・・そうでした。この三月に僕の敬愛するアーティスト坂本龍一氏が亡くなりました。当時、YMOのLPを擦り切れるほど聴きました。戦場のメリークリスマスやラストエンペラーをは言うに及ばずその幅広いアーティストとして一人の人間としての活動全般にシンパシーを感じておりました。音楽に疎い私は通り一辺倒な坂本氏の曲しか知りませんでしたが、NHK MUSIC SPECIAL で拝見し聴いた坂本龍一のピアノソロに涙が止まりませんでした。たった二ヶ月の間にYMOのメンバーであった高橋幸宏氏と坂本龍一氏が相次いで亡くなり、細野晴臣氏はどんな気持ちだったでしょうか。彼らは私より一世代前の人たちではありますが、人ごとではなく徐々に消えゆくモノたちのこと、そして消えずに残るモノのことを考えずにはいられませんでした。

そして今日、闘病のなか坂本龍一氏がその音楽を担当した最後の映画である「怪物」を観てきました。是枝監督の面目躍如といったところでしょうか。さらに脚本と担当した坂元裕二氏がカンヌ映画祭で脚本賞を受賞するといったニュースで話題になっています。映画に関してですが、まず見る前は「怪物」というタイトルに違和感を覚えました。出演者らの予告編や是枝監督の従来の雰囲気から唐突な感じがし内容を予定想像するのが難しかったのです。

これを読まれている方の中にはまだこれから「怪物」を観るのを楽しみにしていらしゃる方も多いと思いますのでネタばれはしませんが、この映画にはいじめ問題や学校教育現場の疲弊、そして思春期にかかる子供たちのみずみずしい性や荒ぶる感情がベースにあり、さらに日常の事件を多面、重層的に見つめ直すことによる加害者・被害者・のあり様とさらにはそうである別人格ともいえる「怪物」の実はの在りどころを問いかけている映画でした。そして改めてその映画を観ている、臨場している私たち自身の中の「怪物」を突き付ける内容でありました。ラストのシーンにおける嵐、そして再生と継続の先にある光に満ちた世界を駆け抜けていく主人公は紛れもなくそれでも生きていく事を肯定し祝祭とする彼らの栄誉に他ならないのではないでしょうか。

子供?彼らに幸せあれ。校長先生である田中祐子のセリフ「誰かにしか手に入らないものは幸せって言わない。」が深く蘇る映画でありました。