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2008/09/04[院長コラム]入れ歯、この新しく古いもの。

こんにちわ。
この所の、ゲリラ集中豪雨は各地で様々な被害をもたらしています。皆様の所は大丈夫でしたでしょうか?
当院はバリアフリーになっており、道路とほとんど段差がないため浸水でもしたら当分の間休診になってしまいます。あわてて土嚢をネットで注文しようとしましたが、同じ事を考えている方が多いらしく品薄で入荷が当分先になってしまうようです。何時も思いつくのが遅いんですよね〜。
皆さんは備えあれば憂い無し、で、行きましょうね!!
さて、「備えあれば憂い無し。」と、いくら言ったって歯が抜けるのを予定して入れ歯をつくる人は居ないと思います。そんな鬱陶しい事、考えたくもないですよね。そうなんです、「入れ歯」は鬱陶しいモノなのです。勿論、歯科医学的には「入れ歯」を鬱陶しくなくなるべく快適に人工臓器として使用して頂けるような理屈や技術はありますが、それらの前提も快適なものではなくなるべく鬱陶しくないモノと言う表現が正直な所でしょう。こんなことを言うと歯科大学の義歯を専門にしている教授(一般の方には不思議に思われると思いますが、歯科大学には総義歯の単科講座があり総義歯学の教授と言う身分の先生が居るのです。このごろは少し気が引けるのか、講座名が変わっていますが実体は同じです。)には叱られるかもしれませんが、事実です。
まず、だいたいが固い義歯が柔らかい歯ぐきで支えられていると言う事自体が痛みや違和感を誘発しますよね?誰だってそれぐらい分かりますよね。
私たち歯科医師はその柔らかい常に形を変える粘膜の形を飲んだり噛んだり話したりの生理的な状況を想定して、精密な印象(かたどり)を採ります。そして、前回も書きましたが、失った本来の組織を想定して入れ歯をつくります。それは往々にして皆さんが想像しているものよりかなり大きなものになります。大きな事にはもう二つ意味があります。一つは、大きく広い面積で噛む力を分散させようと言う目的です。噛む力を広い入れ歯の裏側でささえることにより、力が分散し、力が集中する際の粘膜の痛みが軽減します。
二つ目に、これが大切ですが。適切に大きな形の入れ歯は頬の筋肉や唇の筋肉、そして舌(筋肉の塊)の夫々の圧のバランスの取れた隙間を埋めるような形になり、周囲の筋肉の力によってお口の中にプカプカ浮かんでいるにもかかわらず、あちこちに行ったり来たりしない理屈になっています。上の顎入れ歯はさらにこの事に入れ歯自体の吸着力(吸盤と同じ理屈)が加勢し、所謂しっかりした入れ歯になるのです。
ならば、そういった「入れ歯」をつくればいいと思われるでしょう。そこが何とも厄介なのです。第一には前回も書きましたが、大きさ自体がうっとうしさに繋がるケースが多い事。第二に、お口の筋肉は常に動きますので、どの部分をどこまで大きくするのかが難しいのです。やたら大きくすれば、邪魔になるばかりか動く筋肉や粘膜に必要以上に強く当たり、潰瘍をつくり、痛みを誘発します。その頃合いが難しいのです。
本来は、そのような入れ歯を気長に調整しながらぴったりに仕上げたり、使っているうちに少しずつ筋肉の形に会ってくるような材質の訓練用(リハビリ用)の入れ歯をまずこしらえたりすればいいのですが、やはりココでも健康保険の壁が立ちふさがってしまいます。結局、歯科医師側も患者様側も満足出来ない「入れ歯」で、入れ歯はこんなもんだと納得せざる得ないのが実情なのです。実際にはよりよい「入れ歯」を提供出来るにもかかわらず残念な事です。当院では健康保険でも採算を度外視した精密な印象材料を用いて「総入れ歯」のかたどりをしていますが、そうして作った「入れ歯」もリハビリの期間や訓練用入れ歯材料を認められていないため、残念ながら患者様全てにご満足頂けるものには仕上がっていません。
みなさんは、そのような「入れ歯」が江戸時代から余り変わっていないと聞いたら驚くでしょうか?当時の高級入れ歯はつげの木を削って出来ています。口の中に入れ、朱で筋肉や粘膜の当たりを削って調整し、顎に吸着する理屈の入れ歯をい食っていた事が分かっています。現代の「入れ歯」に通じる技術です。
古くて新しい、入れ歯。この事は何を意味するのでしょうか?